からだに、おせっかい。
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体に優しい、漢方・自然療法のご紹介。
「応急処置」から「からだづくり」まで
漢方の魅力を語ります。
さて、
前回お話しした食べ物もそうですが、
それよりも現代では、
あなたの脳が、もっともっと欲しがり、
むさぼっているものがあります。
それは、「デジタルごほうび」です。
現代人の抱える大きな問題について
深く切り込んだ話題作を読んでみました。
中毒
「うちの子は、時間があればすぐにスマホゲームをしようとする」
と嘆くご両親とお話をする機会が、
以前よりかなり増えたような気がします。
今や国民平均1日4時間、
若者の2割は、
1日7時間もスマホを使っているそうです。
最新の研究によって、睡眠障害、うつ、
記憶力や集中力、学力低下、依存など、
スマホの便利さに溺れているうちに
あなたの脳が確実にむしばまれている
現実が明らかになってきました。
教育大国スウェーデンを震撼させ、
社会現象となった世界的ベストセラー、
アンデシュ・ハンセンの
「スマホ脳」(2019)を読んでみました。
スマホ習慣
あなたは、ラインやメールの着信音が鳴ると、
すぐにスマホを手に取りたくなるでしょう。
「大事かもしれない」新しい情報に
そわそわと欲求を感じて、
「ちょっと見てみるだけ」とスマホを手に取る習慣が、
ちゃんと身に付いていると思います。
しかも、着信のお知らせもないのに、
これを頻繁にやっているのでは。
もしかしたら起きている間中ずっと、
10分おきに。
脳は新しい物好き
スマホがピコンと鳴るたびに
チェックしたくなるのはなぜか。
それは、あなたは
新しいものに興奮する脳を
持っているからです。
脳は、常に新しいもの好きなので、
スマホが運んでくる
新しいニュースや知識に翻弄されて、
そのたびにあなたの脳から
ドーパミンが放出されています。
つまり、じつは今読んでいるページよりも、
まだ見ぬ次のページに夢中になっていて、
どんどんクリックやスワイプが
大好きになるということなのですね。
スマホは、便利な道具というよりも、
あなたの脳にとって
ドーパミンをちょこちょこ放出してくれる
嗜好品になっています。
もうこうなると、
マナーモードにしていても同じことで、
すでにあなたのスマホは「私を触って!」
と机の上から存在感をアピールしているはずです。
最新の脳科学があなたの脳を依存させる
あなたの投稿に「いいね!」が付くタイミングは、
実は、友達がいいねボタンを押した瞬間ではなく、
保留されることもあるなんて、
あなたは知らないかもしれません。
刺激を少しずつ分散することで、
デジタルなご褒美の効果を
最大限に高めることなどは、
初歩の初歩なんです。
SNSの開発者は、
最新の脳科学を駆使して、
いかに最高潮の状態で、
脳を効果的に刺激させるか
日夜研究を重ねているし、
最大限の依存性を実現するために、
行動科学や脳科学の専門家は、
企業に数多く雇われているわけです。
果たして我々の脳は向上しているのか?
依存性があったとしても、
スマホを使うことで
人間の能力は向上しているのではないか
という話がありますが、
調査によると、そうでもないようです。
そのうちのひとつがマルチタスク。
現在のデジタルライフでは、
僕らは複数のことを同時にしようとしがちです。
映画を観ながらスマホに手を伸ばし、
メールチェックをしたり、
だらだらとスクロールしてしまう
ことはないでしょうか?
様々なことを同時に取り組めることを
「マルチタスク」というようですが、
実は、マルチタスクに慣れた若者は、
そうでない若者よりも作業記憶が劣り、
集中が苦手だという
研究結果が出ているようです。
つまり「何にでも気が散る人」
が出来上がってしまう可能性が
あるということなんですね。
その他、精神不調や、
睡眠障害などの問題も取り上げられていますが、
「バカになっていく子供たち」という頁では、
IQ低下の実際も取り上げられ、
読みごたえ満点です。
脳をハメるテクノロジー
スマホアプリ、SNSは、
最新の脳科学に基づき
緻密に計算されて作られています。
どうすれば、あなたの脳がハマるか
を科学者が日夜研究して
組み立てられた依存システムであって、
その依存性から抜け出すのは
大人でも難しいのは
あなたも経験済みでしょう。
その背後で、企業にとっては、
利用者とスマホとの接触時間が
長ければ長いほど利益を生み出す
仕組みが巧妙に構築されています。
子供は、
デジタルに触れていると
すぐに習得しますが、
もちろん依存するのも早く、
デジタルのご褒美に触れ過ぎると
禁断症状が出るので、
親が取り上げると怒り狂います。
小さいうちから慣れさせるのは考え物で、
本当は、自制心の育った
高校生以降でいいのではと思います。
さらにスマホやテレビでのゲームは
パチンコと一緒なんですね。
射幸性があって
抜け出すのが難しいです。
特にスマホゲームは、
昔のテレビゲームと違って、
部屋以外のどこでもできてしまうために、
ONとOFFがしっかりできない、
つまり自制心の足りない
ワガママな子供に育ってしまう危険性があります。
エリートは知っている
では、
こういったデジタル・デバイスを
開発している側の人間は
どう感じているのでしょうか。
スティーブ・ジョブズの10代の子供は、
iPadを使ってよい時間を
厳しく制限されていたのは有名な話ですが、
彼を筆頭に、IT業界のトップは
わが子にデジタル・デバイスを与えない
という話題も載っていました。
例えば、
いいねボタンの開発者
ジャスティン・ローゼンスタインや、
iPhoneの開発者の一人
アップル社のトニー・ファデルなどが、
子供に悪影響を与えることに
罪悪感を感じていると答えていました。
テクノロジーに精通している人ほど、
度を越して魅力的なスマホの使用は
制限した方がいい、
と言っているのは興味深い話です。
依存しやすい人?
この本では、
スマホ依存症になりやすい人は
どんな人かという面白い研究も載っていました。
700人近くの大学生を使った実験で、
積極性に富み活動的なAタイプと、
おっとりして落ち着いたBタイプで比べたところ、
被験者の3分の1は、
夜中もスマホを手放せないくらい
依存している人たちで、
その中には、
明らかにAタイプが多かったそうです。
あなたのお子さんが、
Aタイプであれば、
特に気を付けたほうがよさそうです。
デジタルアドバイス
最後に大人のあなたに送る
デジタル時代のアドバイスをいくつか抜粋しますね。
・目覚まし時計と腕時計を買う。
・ラインやメールをチェックする時間を決める。
・毎日1~2時間、スマホをオフに。
・集中力が必要な時は、スマホは隣の部屋に置く。
・あなたがスマホを取り出せば、周りにも伝染する。
・良い手本になろう。
・子供にはアルコールは禁止、スマホも同様。
テクノロジーはうまく使おう。
現代の多くの若者が抱えている精神的な疾患、
睡眠障害、うつ、記憶力や集中力、学力低下、
自己肯定感の欠如、依存、これらすべてに、
スマホが一役買っている可能性があります。
ハマると、知らず知らずのうちに
脳内物質は消耗し続け、余裕がなくなり、
周囲の人に関心が持てなくなり、
自制心が低下し、依存しやすくなります。
脳への適切な栄養補給を行うことは
とても有効ですが、悪い癖は元から絶ち、
ほどほどにしないといけません。
デジタルな道具は
賢く使わなければならないし、
それにはメリットだけでなく、
デメリットもあるということを
しっかり理解しておくことが必要なのですね。